はじめに

このページは紙の上の魔法使いの感想を書いたページです。
当たり前ですがネタバレ全開ですよ



あらすじ

魔法の本というものがあった。
それは、書いてあることが事実となってしまう本であった。

幻想図書館には、魔法の本の収集・管理を行う遊行寺闇子という人物が居た。
そこには他に5人の人物が住んでいる。
遊行寺夜子、彼女は闇子の娘であり、白髪赤眼の呪われた少女である。
魔法の本は夜子を守る。夜子が望んだことを勝手に叶える。そこに書かれた物語を使って
伏見理央は理外の存在である。遊行寺闇子により執筆された魔法の本である。彼女は夜子に尽くし続ける。
月社妃は夜子の唯一の友達であった。幸せを求め、不幸へ向かう少女。
四條瑠璃は夜子の拠り所であった。彼を求め、魔法の本は開き、閉じる。
遊行寺汀は夜子の兄である。彼は夜子を守り、夜子のために幸せを求める。

そこでひとつの悲劇が起こる。
黒の宝石を冠する魔法の本、オニキスの不在証明が開かれた。

魔法の本による仮初めの恋心を拒否した妃は自ら命を絶った。
真実を知った四條瑠璃はその後を追った。

それを知った夜子は壊れてしまった。
救おうとした闇子は3冊の本を書く。
月社妃―――夜子の唯一の友人を冠した本
四條瑠璃―――夜子が恋した人の冠した本
パンドラの狂乱劇場―――夜子を幸せにするための舞台設定

瑠璃が誰かに惹かれる度、魔法の本は開かれる。
瑠璃が夜子へ向くように。

しかし、夜子は魔法の本と決別をする。
自らが書いた物語を否定し、新しい道を歩き始める。

と、思ったら、魔法の本に書かれた瑠璃はそばにいるんだぜヒャッハー!
よくわからないのぜ!

あらすじなんて意味はないです。
そんだけ

キャラクター

四條瑠璃

上げて落とされるかわいそうな子
オニキスの不在証明後、妃の後を追い首吊り自殺を行う。
アメシストの怪奇伝承以降は遊行寺闇子によって書かれた存在である。

ローズクォーツの永年隔絶で、伏見理央が理外の存在であることを知り、
フローライトの時空落下で、恋した妹に振られ、
ホワイトパールの泡沫恋慕で、自分が理外の存在であることを突きつけられ
ラピスラズリの幻想図書館では、勝手に自分の感情を書き込まれ、
煌めきのアレキサンドライトでは、あらゆることを棚上げされてしまう。

心がぴょんぴょん移り変わる人であり、
かなた→妃→(死亡)→理央→妃→夜子→かなた という感じで移り変わる。
死亡以降は魔法の本に成り代わっているが、恋心は縛られていなかった模様

察しはいいほうだが、それを認めない。不器用でわざと割を食うような行動を取ることが多い気がする。
そこまで嫌いじゃないのだが、やはり妃が魅力的すぎて他の人になびくのは同意しかねる。

フローライトの怠惰現象では、妃とともに死を選ぶのだが、あれはエロゲ史上希に見る気持ちのいい死亡エンドだったと思う。
個人的には生き残る必要はなくて、自我を通すために死んでも、それならそれでいいのではないかと思う。
そういう意味では妃は非常に美しいと思った。

遊行寺夜子

ツンデレ。
ほうっておくと魔法の本が開き瑠璃に近づくものを不幸にするパッシブスキルが自動で発動している。
これは遠回しには夜子の望みを叶えるというものである。
つまり、永遠神剣でいうところの宿命のミューギィである。
こういうパッシブスキルは得てして短期的な望みは叶えるものの、長期的な望みは完全に無視する素敵仕様である。
似たようなものに新世界より――の呪力がある。

自ら開いたファントムクリスタルの運命連鎖では、真逆の性格になり瑠璃に積極的にアプローチする。
ギャップ好きとしては堪らない可愛さであった。

偽りの性格を演じたあと、フラれるために告白をするのだが、妃の後押しもあり実に綺麗な告白であった。

そして、アレキサンドライトのあとはどこへ行くのだろうか…。

月社妃

妃については恐らく言葉にすることは出来ない。

伏見理央

伏見理央は理外の存在である。
具体的には、遊行寺闇子により作られた魔法の本により生まれた存在である。

その性格あるいは性質と呼ぶべきか、それは魔法の本の執筆されており、
そこで規定されると特定の行動をできなくなるようである。

基本的には闇子が定めた、夜子へ尽くすという方針に反対はないようで、
自らの心を押し込めて夜子へ尽くしていく。
お約束通り、心のどこかでは瑠璃に惹かれているのだが、それを表へ出すことはできず、
魔法の本、ローズクォーツの永年隔絶を糧に、その規定から逃れる行動を取ろうとするも、
自らそれを否定し魔法の本に篭ってしまう。

まぁ後に出てくるんですが。
基本的にはぽわぽわ系のゆるふわ少女ながら、背負ってるものは重く、
だけれどもそれを重荷とも思っておらず、
そういう姿はちょっと憧れるなぁと思うわけです。

なんというか、理央は報われて欲しいなぁと思ってしまうキャラなんだなぁと思います。
やっぱり理央は我慢の子なので、そこが崩壊した時は可愛いんだろうなぁと個別ルートが終わっても思ってしまう魅力があります。

日向かなた

勇猛果敢、勇者ポジション
ただしやり方は外道のそれに近い。
ぅゎ、ヵ十夕っょぃ

目的のためならば方法は選ばず、例え何に邪魔をされたとしても、
それを跳ね除けてしまう力がある。
だが私はこいつが嫌いだ。

可憐で尽くすタイプで、惚れ込むとどんどん惹き寄せていく蟻地獄のような彼女
非常に魅力的で、行動の一つ一つが尊敬に値するものである。
だが私はこいつが嫌いだ。

物語の集結は夜子になると思いきや、TRUE ENDでもかなたと瑠璃(紙)がともに生きることとなりそうである。
もっとも夜子のサポートは必要であろうが…。
かなたは恐らく瑠璃が紙の上の存在であることを気にもかけず、
あらゆる困難を跳ね除けて、瑠璃と一緒にいようとするであろう。
だが私はこいつが嫌いだ。

なぜ嫌いかというと、瑠璃は妃のものであり、かなたに所有権はないのに瑠璃といちゃいちゃするからである。
そこは妃のポジションであり、お前のポジションではない。

クリソベリル

過去に何か辛いことがあったからって、許されると思うなよ!

お前がしたことはお前がされたことと同等か、それ以上に酷いことを平気でしてるからな!

勧善懲悪ものが好きなわけではないけど、ポッと出の過去でこいつのしてきた全てを許す瑠璃もかなたも絶対に頭のネジがはちきれていると思う。
夜子がそういう選択肢を取るのはわかるけどね…。

こいつの泣き顔を見たい人は、「蛍色の光景」をプレイして欲しい。

許されないことは許されないんだって、認識してもらおう。

妃のことを除いたら悲劇のヒロインをしてるけど、
なんかそこまでそこまで嫌いになれないのはなぜだろうか。
恐らく人の記憶に残らないというのは、辛いんじゃないかと思う

遊行寺汀

シスコン野郎。
シスコンに悪い奴はいない。

行動力もあり、周りのこともよく考えて行動している。
一つ一つの行動は大胆だが、その代償は自分が払うつもりでいるのでカッコイイ

ちょっと妃に色目使ってるのは許せないけど、まぁそこ以外は本当に良い友人
運命予報でいう早蕨りんごポジ?(それはかなたか?)

遊行寺闇子

不器用な母親
娘への愛情は本当であったと思う。

アメシスト以降は出番がないが、闇子さんが仕込んだことはかなり大きかった。
娘を思うあまり、手段を選ばくなったが、あまりにも直線的な愛情は、
夜子のためになったのかと問われれば、きっとそれはなったのではないかと思う。

本城岬

クラスメイトA
特にメインの出番はない模様。
クラスメイトというポジジョンが必要になったら出てくる。
本城奏の妹でもあるため、ちょっとロールが多い

本城奏

魔法の本を恨むお姉さん。
こういう物語出てくる大人としては、非常に子供っぽい側面が目立つ女性である。

あまり良き指導者でもなければ、あまり良い洞察を与えてくれる役割でもない。
言ってしまえば敵に近いが…
あまりコメントすることがない人である。

シナリオギミック

魔法の本

物語を強制する、宝石の名を持つ魔法の本
架空の人物を登場させる、人の名を持つ魔法の本

前者については物語が始まってすぐに触れられるが、
後者についてはローズクォーツの永年隔絶内で語られる。
理央が魔法の本の存在であることは後出しなのだが、
明らかに不審な点がたくさんあるため、なんらかのギミックが仕込んであることを予測出来るひとは多いだろう。

また、最後の絶望的なネタばらしとして、瑠璃が魔法の本から生まれた存在だということが分かる。

個人的には、妃が死んだ時点でぬくぬくと生き残っていることにそうとうムカついていたので、あそこで自殺したと確認して非常に気持ちよかった。

空白の一年

物語の序盤、サファイアの存在証明の後に空白の1年が存在する。
割りと何事もなかったかのように語られるが、実際に起きたことは凄惨極まりない

加えてクリソベリルについて記憶が混濁していたりと不自然な点が多々見受けられる。
結構酷いのでキャラクターの連続性を疑いたくなるレベルなのだが、
まぁあれだけショックなことがあったのだから、仕方のないことなのであろうが…

主な主体の活動を一時的に停止し、そこに様々なギミックを仕込んでおくのは割りと面白い手法であるので、どんどん採用してほしいと思う。
ただ、隠し情報には成り得ないので、もうちょっと露骨にやったほうがいいのではないかなぁと思わなくもないが、まぁなんでもいい。

特筆すべき点

CGについて

使い方が巧妙であると思う。
分量が少ないという人もいるが、個人的にはそんなのどうでもよくてうまく使えていればそれでいいと思う。
各ルート終盤のCGの使い込み方は素晴らしかった。
しかし、桐葉さんのタッチが途中で変わってしまったのは残念。少し小顔ツリ目になったか…。

特筆すべき使い方なのだが、フィーチャーされるヒロインが俎上に上がるとほとんど一枚絵がついてくる。
凶刃に立ち向かうかなたの勇姿や、凛々しくも儚い妃の覚悟、





「恋に敗れて、死んでしまえ」





このシーンでこのCGを重ねたのは恐らくしばらく脳裏から離れないだろう。

ようこそ絶望の底へ

瑠璃(主な一人称視点キャラクター)がどうしようもなくなる情報を畳み掛けるようにぶつけるシナリオ構造

 妃
「――私が、責任をもってあなたのことを不幸にしてさしあげましょう。
安心して、不幸の渦に沈んで下さい。」

この言葉が象徴するように、物語を進めていくにつれ四條瑠璃はどんどん不幸になっていく…。
望まない物語に巻き込まれ、
最愛の妹を失い。
愛してくれた存在を失い。
再度妹を失い。
自分自身が偽物だと突きつけられ
生前から続く記憶さえも偽造であることを突きつけられる。

この不幸への連鎖は実に耽美であり、いつまで経っても妃の言葉に縛られている。
妃は物語の冒頭で失われるが、妃の言葉はずっと瑠璃を縛っている。
兄妹という関係ながら、恋に落ち、体は失われても縛り続けられるというのは、
最高に不幸で最高に幸せのように感じる。

最後にアレキサンドライトでなんかそれっぽく終わるけど、
実はあんまりいろいろなもの解決してないからね、もっともっと不幸になれ!

総括

キャラクターが魅力的であり、
物語も魅力的であり、
舞台も魅力的である

非常に優れたエロゲーの一つと言って良いと思う。

とくに減点要素はない、加点要素は妃である。

冒頭の不幸になろうというセリフが印象的であり、
目的のためなら手段は問わない、
瑠璃が大好きだけどそれ以上求めない。

とても素敵な妃に出会えたことがこのゲームの一つの価値であると思う。


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Last-modified: 2020-03-07 (土) 09:05:01